統合失調症
統合失調症
統合失調症は、実際には聴こえない音や声などが聴こえる幻聴や、実際には起こっていないことを事実だと信じ込む妄想、などの症状が起こる病気です。治療を受けないと長い経過をたどることがありますが、新しい薬や治療法の開発が進んだことにより、多くの患者さまに長期的な回復を期待できるようになっています。
統合失調症は多くは思春期から青年期に発症します。生涯のうちに統合失調症を発症する人は1.5%程度と報告されており、約100人に1人が発症すると考えると少なくない身近な病気といえます。
統合失調症は、突然発症する場合もあれば、長い時間をかけて徐々に発症する場合もあります。明らかな妄想や幻聴などの症状が出現する前に、うつ、不眠、不安、集中力低下といった症状が先行する場合があり、これらは前駆症状(精神病発症危険状態)と呼ばれています。このような症状は統合失調症の始まりと認識できる場合もありますが、症状が軽いため統合失調症と診断することが難しく、しばらく経過を見ていく中で振り返ってみると前駆症状であったとわかる場合もあります。
統合失調症の症状の重さや経過はさまざまですが、人間関係や仕事、身の回りのことをする能力に支障をきたすことがあります。予後を良くするためには、発症早期から治療を開始することが重要です。
しかしながら、統合失調症では、本人が病気であることを自覚しないことがしばしばあるため、治療開始が遅れてしまったり、治療を自己中断してしまってその間に症状が悪化してしまうことがあります。
統合失調症の原因は現在のところ解明されていませんが、統合失調症になりやすい素因をもっている人が、生活上でのさまざまなストレス、環境や人間関係による持続的な緊張状態などを誘因として発症することが示唆されています。発症には脳の発達障害などの形態学的要因、ドーパミンという神経伝達物質に対する反応が亢進しているという神経科学的要因などさまざまな要因が考えられており、複合的に発症に関与していると考えられています。
統合失調症の幻覚や妄想に対しては、抗精神病薬が有効です。さまざまな抗精神病薬の作用で共通しているのは、神経伝達物質の一つであるドーパミンを介した情報伝達をブロックする作用であることがわかっています。このような抗精神病薬に共通する作用から、統合失調症ではドーパミンに対する感受性が通常よりも亢進した状態となり、幻覚や妄想が生じるというドーパミン仮説が考えられています。しかし、統合失調症のうち、陰性症状(自発性の低下、感情の平板化など)はドーパミンに対する抗精神病薬では改善されにくいことから、ドーパミン以外の神経伝達物質の関与も考えられています。
統合失調症の治療は、薬物療法と心理社会的治療を組み合わせて行います。
前駆期には心理社会的治療を主に、薬物は慎重に適応を選択します。急性期には症状を改善するために積極的に薬物療法を行います。丁寧に治療関係を築きながら治療を進めていきます。症状の改善した安定期にも再発を防ぐために薬物療法を続けながら、心理社会的治療を行います。
幻聴や妄想などの症状には、抗精神病薬が有効です。統合失調症は症状が一旦改善した後もお薬を継続的に内服する必要があります。調子がよくなったからといって自己判断で中断して症状が再燃してしまうと、病状が重症化してしまうリスクが高くなります。統合失調症は症状の改善と再燃を繰り返すことで病状が進行し、回復困難な脳の障害をきたすと考えられているのです。もし体重増加や眠気、手の震えなど気になる副作用があってお薬を続けることが難しい場合は、よく相談しながらお薬の調整を行います。現在は毎日のむ内服薬だけでなく、数週間に1回の注射薬もありますので、それぞれの生活に合わせた治療を行うことができます。
心理社会的な治療としては、精神療法やリハビリテーションなどが含まれます。自身の病気のことや不調になる引き金などを知ることで、安定した状態で日常生活を送ることを目指します。ご本人を支えるご家族にも病気の理解を深めていただき、生活環境を整えます。さらに社会で生活をしていくために、様々な社会資源を活用してリハビリテーションを行っていきます。