もの忘れ・認知症外来
もの忘れ・認知症外来
当院は認知症疾患医療センター連携型としての役割を担っているほか、日本老年精神医学会認定医療機関、北九州市ものわすれ外来登録医療機関、認知症初期集中支援チーム登録医療機関として、長年認知症医療に携わってきました。
当院のもの忘れ外来を受診される方は、ご自分で「この頃もの忘れが気になる」という方から、もの忘れがひどくなったことにご家族が気付いて受診される方、身体疾患で介護保険のサービスを既に受けているが「認知症を発症しているのではないか」とケアマネージャーに受診を勧められる方など様々です。どのような状況でも、一度専門医に相談してみたいという方々が気軽に受診していただきやすいもの忘れ・認知症外来です。
初診時は専門医が症状・経過などをしっかりとおうかがいし、神経心理学的検査を行います。更に必要時は頭部画像検査(北九州市医療センターと連携しています)を行い、総合的に診断を行います。
診断後はそれぞれの方にあった今後の治療方針をご提案し、その後もご相談にのりながら、より良い生活を送れるようにサポートしてまいります。
年齢を重ねていくと自然と増えていくのが“もの忘れ”です。知り合いの名前がなかなか出てこない、何かをしようと思って動いたのに何をしに来たか忘れてしまった、などはある程度年齢を重ねると珍しくないことだと思います。しかし、それらのもの忘れの中には、年齢相応のものと、年齢相応とはいえないものがあります。この年齢相応とはいえないものが、軽度認知機能障害(MCI:健常と認知症の中間段階)や認知症といわれる状態です。
このようなMCI・認知症の中には、早期発見や適切な治療を行うことで回復するものもあるため、きちんと診断をすることが重要です。うつ病や意識障害の一種であるせん妄、転倒などによる頭部打撲後に起こる可能性がある慢性硬膜下血腫などは一見認知症と似たような症状を起こす場合がありますが、これらは治療が可能です。
また、根本的な治療法が確立されていないアルツハイマー型認知症などでも、適切な薬物選択や生活指導を行うことで、症状の改善や進行抑制が期待できます。2023年にはアルツハイマー型認知症の新たな治療薬が発売され、早期発見がより重要となってきました。
下記のような症状が見られた場合は、一度受診してみることをおすすめします。
ご自分では何とも思っていないのに周囲から受診をすすめられた場合は、嫌な気持ちになることもありますよね。でもこの機会に一度脳や気持ちの健康診断として気軽に検査を受けてみてはいかがでしょうか。また、ご家族に下記のような症状があった場合、ご本人が受診を嫌がられることもあると思います。その際も一度当院にご相談ください。必要時は往診などもご検討いたします。
ものごとを記憶したり、判断したり、順序立てて行うなどの脳の機能を認知機能といいます。認知症は、この認知機能の低下によって、日常(社会)生活に支障が出るようになった状態をいいます。認知症にはいくつかの種類があり、日本ではアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が多く、認知症全体の約8割を占めるといわれています。それらに次いで多いのがレビー小体型認知症です。また、年齢に伴うもの忘れと認知症の中間的な段階にある軽度認知機能障害(MCI)があります。いずれもできるだけ早期に発見し適切な治療を受けることが重要です。
多くの場合、徐々に認知機能が低下して認知症になりますが、その経過の中で認知機能が年齢相応よりも低下しているけれど日常生活には支障がない状態、つまり正常な認知機能と認知症の中間の状態があります。これを「軽度認知機能障害」と呼びます。現在、この軽度認知機能障害の段階で発見し、原因を診断したうえで、治療方針を立てることが認知症の診療の重要なポイントになっています。
日本人で最も多い認知症で、全体の約6割以上を占めています。1907年にドイツのアロイス・アルツハイマー博士によって初老期の認知症の症例が報告され、後にアルツハイマー病と名づけられました。脳にアミロイドβやタウ蛋白という特殊なたんぱく質が沈着し、それにより正常な脳神経細胞が変性することで発症すると考えられています。老年期の認知症にもアルツハイマー病と同様の脳の変化が起こっていたことから、同じ脳の特徴をもつ老年期の認知症も含めて広い意味でアルツハイマー型認知症と呼ばれるようになりました。
アルツハイマー型認知症の進行は大体以下の3つの段階にわけることができます。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起きた後に認知機能が低下するものです。脳血管障害によって突然認知症を発症したり、小さな脳梗塞(かくれ脳梗塞)がたくさんあることで段階的に認知症の症状が現れたりする場合もあります。脳血管障害を起こした部位によって現れる症状も異なり、アルツハイマー型認知症とは違って身体症状(歩行障害など)を伴うのも特徴です。記憶障害や無関心、遂行機能障害などいろいろな症状がみられる一方で、判断力や理解力などは比較的保たれている「まだら認知症」がみられることが多いです。脳血管障害を引き起こす危険因子をもっている場合が多く、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患などの合併に注意し、きちんと治療をする必要があります。
認知症にはほかにも、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などの種類があります。
問診では、症状や経過、現在治療中の病気などを詳細に聴取し、認知機能低下のスクリーニング検査としてMMSE(Mini-Mental State Examination)、時計描画テスト(CDT)などを行います。また、頭部MRI検査、SPECT(脳の血流をみる検査)などを行います。
こうした検査を行うことで、認知症の診断を行い、早期から進行を予防する方法の検討や治療を行うことが可能になります。
認知症の症状として、記憶障害や遂行機能障害などの認知機能障害そのものの症状である中核症状と、認知症の行動・精神症状(Behavioral and Psychological Symptom of Dementia; BPSD)と呼ばれる周辺症状があります。BPSDには、幻覚、妄想、不眠、不安、抑うつ、易怒性・攻撃性、徘徊などが含まれます。具体的には、なくしものをしたときに家族が盗ったのではないかと疑う“もの盗られ妄想”、些細なことですぐに興奮して怒る、外出好きだった人が閉じこもりがちになる、などの症状がみられます。中核症状による生活への支障はもちろんありますが、この周辺症状はご本人や介護者をとても悩ませる症状です。
当院では中核症状のみならず、これらの周辺症状に対しての治療も行っております。日常生活での対応法とアドバイス、重度認知症患者デイケアでの作業療法、必要時は薬物療法も合わせて行い、安定した生活ができるようにサポートしてまいります。